ティーダフラッグス2024について Part 2
- kuniyoshi99992222
- 2025年9月26日
- 読了時間: 40分
出演:國定、城間、二階堂
銅賞「つなげる 帯でつながる庭球場管理棟」
(ファイブディメンジョン一級建築士事務所:松本、山内)
國定:計画敷地の南北にあるテニスコートの人々を建物がつなげるというコンセプトで、1階では既存施設と増築部分の機能を分散しつつ、その間に人溜まりとなる休憩所を多数配置するといった見通しの良い計画としています。2階では立ち見席となる床スラブを広くとりつつ要所で屋根付き観客席や上下でつながるための吹き抜けを造り、それを「白い帯」と題した手摺で覆うことで既存と増築部分との一体感を演出している案です。また、メインコートでもある会議室北側は他の案でもあるように窓をセットバックしてベンチを設置し観客席としています。僕の印象では他の案よりも多目的に利用してもらうことを考えていて、観客空間にもなる展望台に近い構成なのかなって思いました。
二階堂:後で紹介しますけど、この案が僕らの案に一番考え方が似ているんじゃないかなって思っていて、「つなげる」っていうタイトルにもなっているように既存部分と増築部分とを分けるんじゃなくて、どうやって一体化させるかということを考えている。2階床スラブと手すりを使って一個の新しい建築物を造りたくて、その上下に色々な機能を配置しているっていうことかなと。
國定:大屋根じゃなくて大スラブで一体的につくる提案ですね。
二階堂:そうそう。
國定:要望の観客席の数については広い大スラブの要所に分割していて、会議室の前で半分を確保しているんですよね。少し狭そうな感じもしますが。
二階堂:うんまぁ、でもこれだけ広い立見席も含めた面積あれば十分対応可能でしょうっていうね。
國定:うん、その判断もできますし、2階部分では椅子は必要最低限で留めて、より多目的に対応できますよってことですね。1階部分も既存の建物や機能を分割しつつその間に休憩スペースを差し込んでいて、既存がどこからどこっていう線引きが分からないようにゴチャ混ぜにして再構築したっていう感じなのかなと。
城間・二階堂:うんうん。
城間:個人的には分かり易い案だと思います。ただ、やろうとしていることがレイアウトだけで説明しきっちゃっている感じもある。
國定:うん、何となく分かる。
二階堂:僕が思うに、さっきの「未来への翼」案との違いはスラブの側面に「帯」っていうオリジナリティがあるのかなって。ただその「帯」をメインにしているけれども、手すりやスラブの造り方自体には詳しい説明がないから普通とどう違うのか分かりづらい。もっとオリジナリティあるデザインの手すりにした方が良かったと思う。
城間:そうですね。
二階堂:あとは全体的に地味な印象があるかな。
城間:他と比べて特徴があると言えばある案だけど、意図的に過度なデザインを消している印象だから地味って言い方は確かに納得できますね。
二階堂:うん。例えばモチーフを用いて「風になびく帯」とか。
城間:確かにデザインするとしたら「結ぶ」といった、帯に合わせた要素を入れたくなりますね。
國定:なるほど。割とそれだけでもかなり印象は変わる気がしますね。
二階堂:アイデアとか提案としては好きだけど・・・なんて言ったらいいのかな。
城間:うーん、議論になるかわかりませんが、「道の駅」っぽくないですか?
二階堂・國定:あぁ確かに。
城間:と言うか、テニスコートにある施設っぽくない感じ。
國定:それは凄く分かる。楽しげな休憩所や空間をつくることで人が集まって交流してもらう建築物を目指しているけど、その目的自体も含めてこのコンペじゃなくても普通に成立する、ある意味無難な案に見えてしまっている。
城間:「帯」っていうアイデアは良いけど、テニスコートにある施設として、この場所をどういうことができる場所にしたいのかをもう少し具体的に書いて欲しかったかな。例えば休憩所にある大きなテーブルはこの施設においてどのように利用されるのかいまいち分からないし、熱狂的なスポーツを応援している施設としてのイメージが湧いてこない。
二階堂:そっか。そういう意味では観客席としての説明が少ないし、先ほどの案(未来への翼)とは対照的で、意外と要望で求められている機能に対するストレートな回答はしていない。つまり自分たちの建築の提案をしているけど、要望にはそんなに答えていない案かもしれない。
國定:うん、そうだと思います。ある意味で自分たちのやりたいことをやっていて、要望に対する回答は一応したからOKっていう割り切り。
二階堂:要望は多分満たしていそうな気はするけど、そこに対する提案はしていないってことか。だから「道の駅」っぽく見えてしまう。
城間:うん。違和感を言葉にするとそんな感じですね。休憩スペースのつくり方にリアリティをあまり感じられないというか。
國定:少しまとめると、コンペの要望に対してその枠を超えた提案をするなら、その部分をワントピックとして扱うくらいの説明が欲しいですよね。計画的には休憩スペースをこれだけ差し込みたくなる気持ちも分かるんだけど、テニスコートにある施設としての特別な使われ方を提案できていないから、やっぱりまだ無用なものに見えてしまっている。
城間:なるほどね。
國定:あとは最初この案見た時、増築する2Fのスラブが凄く大きいと思ったんですよね。そんなに建築範囲を広げたり既存施設の1Fをこんなに改修してコストは大丈夫なのかって。
二階堂。:うん。
城間:質疑でコストの話は出なかったの?
國定:意外にもコストの話はコンペ全体を通して出なかったね。改修部分と増築部分の予算の割合とか絶対聞かれるだろうなって思っていたけど。だから結果としては、横方向のダイナミックさを表現して良かったってことだけど、少しモヤモヤはするね。
國定:あと最後に、最終審査ではこの案に審査員の注目があまりいかなかったっていう点も少し話しておきたい。多分だけど、2位の「プロムナード」にこの案の票が食われたんじゃないかなって思っていて、先程の議論を踏まえて2つの案を見比べると、「プロムナード」の方が提案したい部分を具体的に説明できていて、管理も含めた使われ方をよりイメージしやすかったって部分で差がついてしまったのかなと、今振り返ると感じるね。
城間:ああ、そうだね。それは確かにあるね。
学生賞「選手と観客のみどりのベンチ」
(専修学校インターナショナルデザインアカデミー:石原昌輝、石原愛華、
清村、豊里、チェシーコーディークリストファー、比嘉)
城間:次は学生賞ですね。引き続き國定君に概要説明をお願いします。
國定:はい。IDA(インターナショナルデザインアカデミー)の案が学生賞を受賞したのはティーダフラッグスで初めてになると思います。プランはオーソドックスにまとめつつ少しゆったりとした印象になっていて、+アルファとしては植栽とセットになっている「みどりのベンチ」を要所に計画しています。小さいですが観客席の脇のスペースにも特徴的な空間を創出していて、植栽を利用してリラックスできる観客施設を目指した提案となっています。
城間:うんうん。なるほど。
國定:ただ、プレゼンシートはやはり学生らしい荒さが目立ちますし、不明な点も多いです。パースと図面だけでは雰囲気しか伝わらないし、何を用いてどこをどうしたいっていう具体的箇所をもっと細かいトピックに分けて説明・提案するべきだと思います。全体的に提案力の薄さも目立ってしまう。
城間:この案に関してはやっぱり専門学生が初めて学生賞を受賞したっていうのが印象的だよね。ここで少し「緑化」に話を広げたいんですが、ティーダフラッグスでの緑化という手法についてどう思いますか?
二階堂:ティーダフラッグスでというよりかは計画の場所によって考えることで、今回で言うとテニスコート周辺に限って言えば、緑は少ないからメンテナンスがしやすい範囲で植栽を計画するのは良いことだと思う。その観点で言えば、例えば去年のティーダフラッグス2023の國定君の案では屋上緑化を用いていたけど、周りにすでに緑がある中でわざわざ人工的に屋上緑化を提案するのは違和感を感じたし、場所的に緑化による断熱効果とかのメリットも薄いのかなって。
城間・國定:うんうん。
二階堂:やっぱり提案によりけりだし、メンテナンスの問題をクリアする前提で、建築に緑化が必要であればしたほうがいいんじゃないかなとは思う。
國定:そうですね。そこに関しては僕もティーダフラッグス2023で提案した屋上緑化の案の反省点はやっぱりあって、公開審査であそこまでメンテナンスが敬遠されるとはちょっと想定してなかったのが僕の落ち度だと感じましたね。メンテナンスの仕方も含めて、もっと詳細に詰めるべきだったなと。
城間・二階堂:うんうん。
二階堂:それもあるけど、本当にあの場所で屋上緑化することの効果があるのかっていう。緑化が絶対に建築と切り離せないものだっていうことが必要なんじゃないかなって。
城間:そういう意味では、國定案の緑化は提案のメインではなかったよね。
國定:一応コンセプトからの派生の提案だったけどね。まあ軽い気持ちで提案したつもりはなかったし、ちゃんと自分なりの理由をつけた提案をしてはいるけれども、やっぱり緑化に対する認識が甘かったなと。
二階堂:まあ、今回の「みどりのベンチ」案との違いで言うと、那覇っていう都市で植栽を提案するっていうのはヒートアイランドの問題もあるし、一応合理性はあるのかなっていう感じはします。
國定:なるほど。一理あると思います。
城間:少し話を変えると、銀賞「抜け感のプロムナード」の案と緑化の相性が良かったかもしれないとは思っているんですよね。
二階堂:うん。
城間:都市の中に「プロムナード」を造ることに関して、植物をディテールの1つとして組み込むことで全体の雰囲気をつくっていくっていうのは、実は可能性あったんじゃないかなってのいうのはちょっと思った。もしかしたらね。
國定:うん。実際にやると、提案内容のバランスが難しいと思うけど、つくり方としてはそういう方向もあったのかもしれないなっていうのは分かる話だね。
二階堂:うん、確かに。
入賞作品の印象
城間:ということで、金賞から学生賞まで振り返りましたけど、入賞した作品群に限らず、このコンペ全体として何か思うところとかありますか?
國定:うーん。二次審査に進出した7作品で言うと、妥当な印象を受けたかな。
二階堂:うん。評価のポイントはこれまでのティーダフラッグスとあまり変わっていないような感じかな。
國定:そうですね。変わっていないしサプライズもなかったよね。こういう案が二次審査に進出するだろうなっていうのは、今までの経験上の予測とそこまで外れていなかったし。でもまあそこから先は会場の流れや運もあるから読めませんけど。
二階堂:そうだね。それに毎年のことなんだけど、予算に対する評価のポイントがわからないという点はあるよね。明らかに予算オーバーしているだろうなっていう案は確かに落ちてはいるけど。どこまでが二次審査進出できるハードルなのか全然わからない。
城間:確かに。
二階堂:今回のコンペでも上位に残った案が全部予算的に怪しいのは怪しい気はするけど、明らかにオーバーしているだろうなっていう案はない気がする。
國定:僕も怪しいとは思いますし、そのラインの見極めは本当に難しいですよね。
二階堂:うん、そこがわからないしどう取り扱って良いんだろうっていう。
城間:いつも難しいですよね、そこは。
國定:毎回僕もかなり悩む部分です。
二次審査進出「Add-on ファサードレイヤーによる増改築の提案」
(今村金城建築設計事務所:今村、金城、二階堂)


二階堂:僕らの提案は銅賞の「つながる」案とコンセプトが似ていて、新築部分と増築部分をどう一体化させて一つの建築物をつくるかについて考えて提案しました。既存施設の両サイドに観客席を設ける案が一番多く出てくると思ったので、そこは避けつつ予算を抑えたコンパクトな増築として、ファザード部分の細いところ(既存施設と隣地境界線の間)で提案を完結させようと考えて、その観客席でもあるスタンド部分を一本足の細い柱たちで支えるために、片持ちの構造を加味した形状にしています。スタンド部分は観客席になったり、通路や会議室の延長としてのちょっとした休憩場所など、使い方によってその時々で機能は変わっていくようなものを提案するため、既存の床ラインを保ちつつそこから降りる形で階段状のベンチを設計しました。これは観客席とか会議室をつくるとは言わずに、自分たちはあくまでも緑のファサードレイヤーをつくるという提案をしたかったという考えですね。またそうすることで、面積的に最小限にも抑えることも目的としていて、その細い緑のファサードレイヤーに焦点を当てて提案することにこだわりました。他には、例えばバリアフリーとか観客席の増減などの対応については、余分に空いたスペースを活用したりスタンドの延長で対応できるようにしています。緑のファサードレイヤーについては重要な部分なのでオリジナリティを出したくて、階段の形状や既存の工法に頼らない提案を心がけました。あとはまあ、竹馬っていう要素は工法が似ている前提での戦略的なイメージ付けをしています。僕たちの提案をまとめるとこんな感じですね。
國定:はい、わかりました。今回3人の連名で出していますけど、エスキスの進め方などの割合はどんな感じだったんですか?
二階堂:7対3か6対4で僕が少ない方かな。
城間:ああ、そうなんですね。
二階堂:うん。最初の細い部分で作るっていうゼロイチのアイデアは金城さんが出して、その考えを形にしたのが僕で、発展させたのが今村君って感じかな。そこからは全員で案全体をまとめたイメージですかね。
國定:なるほど。
城間:じゃあチームでちゃんとつくり上げたって感じですね。
二階堂:そうだね。毎週打ち合わせって感じで。
城間:わかりました。質疑ではどんなことを聞かれましたか?
二階堂:やっぱり、最初に伊礼さんから言われたのは、一本足の工法的な部分で、もっと合理的でシンプルにできたんじゃないかってことに関して、特に階段状を支える斜め材の方杖についての質疑があったよ。
國定:通常の合理的な片持ちを支える方杖とは方向が逆じゃないかってことですね。
二階堂:まあ、それはその通りですし、新しさを追求することを先行してしまった部分もあって合理性がちょっとなっていうのは確かになとは思いましたね。
城間:はいはい。
二階堂:あとバリアフリーはどうなのかについての質疑があった。これについてチームとしては、実施設計でスロープを設置したらいいじゃないの?と思っていて、そこは提案の主軸じゃないっていう思いで提案から省いた部分ではある。
城間:うん、その判断は良いと思いますね。
國定:僕がこの案でまず気になったのが、増築部分として1階でトイレと倉庫を新たに計画していますが、その2階部分の屋上広場(予備スタンド)についてです。平面図で見るとかなり広く感じますし、少しでも使い方を示してあげた方が優しかったんじゃないかなと。
二階堂:そこは予備のスタンドにも出来ますよっていう提案で、余白として残しているんだけど、要は観客席の狭い印象に対する保険だね。要求としての観客席の収容人数としては、細い観客スタンド部分で足りるけど、この予備スタンドでもっと人数も増やせる。あとはプラン的に吹き抜けだったり、休憩スペースや通路などの抜けのある空間を1階部分に計画するためには、トイレと倉庫は外側に新たに増築せざるを得なかったというのもあった。だから順序としては1階プランが先で、その上をどう使うかって言ったら予備にしたって感じかな。あくまで自分たちが提案したものは、最小限のファサードの部分ですよっていうことを強調するために、あえてこの予備スタンドの使い方は示さなかったっていうのはありますね。
國定:うんうん、なるほど。
城間:他にはこのファサードレイヤーについて、國定から見た二次審査での印象とかはどうですか?
國定:プレゼンシート上でもそうだし二次審査でも思ったことは、二階堂さん達のファサードレイヤーっていう提案と近い提案をしちゃっている他の案が意外に多かったなって。これは提案レベルの大小はあれ、要項を読み解くことで割と出てくる発想の一つではあるだろうから仕方ないですけど、会議室の南北方向(北のメインコート側だけでも)に床を増築するなりして少しのオープンスペースを設けるのがベターじゃないかというのは皆の共通認識になっていて、なぜなら現地調査すれば、既存施設の2階会議室が一番応援するには良い場所だっていうのがすぐ分かるし、2階部分で東西方向に通り道を計画したくなる(会議室を通らないで)。多分そういった理由から提案する人が多くなったと思うんですが、そのせいもあってこの案が少し埋もれてしまった感があるんじゃないかと。
二階堂:うん、そうだね。やっぱりどう考えても既存管理棟の正面が応援するには一番良い場所だと思うしね。
國定:そうですね。あまりにそう提案したくなるというか、他の人がこの提案をせずに東西に観客席を全て設けていたとしたら、際立って良い案だなと思ったでしょうけど・・・。まあそういった面から提案自体が少し小さい話に収まってしまった感が否めないような気はしているんです。
二階堂:うん、でもそれが狙いでもあって、それ以外の余計なことをしていないという提案だからしょうがない部分だと思う。ただ、そこに関する別の重要な観点としてはやっぱり予算の問題なのかなと。
國定:そう。二次審査ではなぜか予算の質疑が少なかったですが、提案者主導でそこの話まで広げていればこの案にもっと強みが出ていたと思います。けど
審査員的には、予算は少し置いといて「+α」の提案が欲しくなっちゃったとしたら、ちょっと薄味の提案に写ってしまったんじゃないかと思います。
二階堂:うん。だとしたらそう思うね。それに自分たちの案を第三者目線で考えると、この提案をするのであれば予算見積もりはしっかり取っておくべきだったなと。
國定:確かに、しっかり見積もりも取ってこの数字でやりますっていう説得力を出せたら、そういう勝負に持っていけた案だと思いますね。
二階堂:そう、数字。そっちに持っていくべきだったし、一本足についても構造的な見解というかもっと詳細な提案をすべきだった。
國定:確かに、ここまで引き算の案でやるんだったら、そこの具体的説得力も出した方が良かったかもですね。あと思ったのは、会議室の前を観客スタンドにして座る席を作るっていうことに僕は抵抗があったんですけど、そこはあまり感じませんでしたか?
二階堂:いや、ここは絶対にスタンドとして使えるようにするべきと思ってそういう提案にしたし、試合中に会議はしないでしょって思って支障なしと判断したかな。
城間:会議じゃなくて大会運営としての利用についてはどう考えました?
二階堂:大会運営として場所を確保しておけばいいと思っていて、それは運営でこの会議室全体は使わないでしょっていう判断で、その時には部分的に観客が座らないようにするとかで対応できるかなと。
城間:僕はその部分は違う方向で考えてしまったんですよね。自分がソフトテニスをやっていた時、大会運営のシーンを見ていたのですが、大会運営時に運営側は常にコートの状況を把握する必要があり、会議室から競技を見通せた方が良いだろうと思って、会議室の目線を遮るような位置に観客席は計画しなかった。でも管理者がコンペの審査に入っていて、一定の評価をしているところからしても、多分これで良いんだっていうのは感じましたね。実際こういうつくりのテニスコート管理棟もあると言えばあるし、まあいけたんだってのはありますよね。
二階堂:うんうん。
國定:そうね。まあでもそこに関してはどちらかと言えば、僕も城間君の考えに近い読みだった。会議室と大会運営のすぐ近くに観客席として多くの人が座って応援している場所があるって出入りしにくいなとか使いづらいよなっていうのも感じていて。それよりかは、立ち見応援も出来る渡り廊下くらいの少しフランクな空間にして、観客席は別でしっかり取ってあげようっていう考えだったんですよね。
二階堂:うん、なるほどね。
國定:それに二階堂さん達の案だけじゃなくて、皆もスタンド席としてしっかりここを整備していているけど、成立はしているがやっぱり狭すぎると思うし、座っている人の前を通る計画も少し抵抗感があって。まあ細かいことですけどね。そういったところで、ここはスタンド席じゃないかなと思ったって感じです。
二階堂:うん。狭いのはもちろん狭いけど、そこはやっぱり予算的な前提が強くて、改修で5〜6千万いくとしたら両サイドに新築でスタンドを作るっていうことにどのぐらいの予算を当てられるのかっていう考えで、もう本当にこの細い部分で完結させるっていうことに振り切ったっていう感じだね。
城間:うーん、なるほどですね。
國定:今回は「改修+増築」ってことで予算の割り振りはやっぱり重要になってきますよね。最初に二階堂さん達の案を見た時は、そこも含めて考えると僕は正直「あり」な案だと思ったんですよ。要はどの方向に振り切るのかっていう部分で削るところは削る提案。
二階堂:うん。
國定:そこに関して僕の案の考えは、2階部分の窓を少し変更するけど1階の改修はほぼ移動させないことで改修の予算割合を少なくして、その分を増築部分の両サイドに振るって考えなんですよ。それで完璧に成立するかは少し怪しいですけど。
二階堂:うんうん、なるほどね。
國定:そういう意味では二階堂さん達の案は、しっかり予算内に収まるように考えられていそうだなと感じますが・・・。
二階堂:うんでも、そうするとどうしても他の案と並べて比べた時に物足りなく見えてしまうっていう問題はある。予算ってどう捉えたら良いんだろうね。
城間:仮に予算いくらでも使っていいですよってなったらどうしていました?
二階堂:それは難しい問題(笑)。
城間:それはそうなんですが、要は二次審査で落ちた理由が予算を意識したからなのか、そもそも見当違いだったのかについてもう少し探りたいと思いまして。例えば銅賞の「つなげる」案との違いはどういった点なのかとか。
二階堂:見当違いだったら二次審査にも残らないはずだから、そこまで外れていた訳ではないとは思います。案の違いに関しては多分「充実感」じゃないかなと。僕たちの案は両サイドに充実さは感じられないので。
城間:なるほど。「充実感」ですか。僕としては二次審査で上がった中で二階堂さん達の案がデザイン自体は一番しているんじゃないかなと思っていて、つまりテニスコートのそばにある建物としてしっかり考えられたデザインだなと。
二階堂:うーん、あまりにも地味過ぎたのはあると思います。公共事業としての税金を使ってつくるものとして、例え玄人目に見たらちゃんとデザインされているものだとしても、普通の一般人からするとちょっとピンとこないだろうなと。それよりもやっぱり何かモチーフがあって大きく羽を広げてつくったものの方が、分かり易いし、コンペだったり公共工事として納得は出来るかなと。
城間:うーんなるほど。今回全く見積もりは取っていなかったのですか?
二階堂:うん、全然取ってなかった。だからその部分に対する根拠の薄さは自覚あるし、結果として案が弱く見えてしまったなとも思う。ディテールは詰めているけど、構造設計も頼んでいないから本当に安全かっていうところの怪しさもあるし、あとは質疑でも突っ込まれたけど、一本足の一部が基礎に干渉する部分があって、そこをどうクリアするかとか、全体的に詰めの甘さがあったのも事実だと思う。まあ、最小限に近い面積とコストでこれだけできますよっていう狙いだったけど、自分たちの甘さもあるしで豊かさの提案までには至らなかったかなと。
城間:なるほど。
國定:まあそうですね。悪く見れば予算がこれだけしかない=これしかできませんでしたって言っているようにも感じてしまうかもしれませんね。
二階堂:うん、そう見れなくもない。「Less is more」 のmoreの部分が少ないなっていう感じはある。「Less is Less」 で終わっちゃってる。
城間:うーん。やっぱりティーダフラッグスのコスト管理は難しいですね。國定たちはどうやったの?
國定:コストに関しては、僕も平米(坪単価)の概算でしか基本的には出さない。これは、今まで低コストを強調した案を出したことがないっていうのもあるけど、単純にそこについて必要以上に質疑がくるのを避けたいっていう意味合いが強いかな。やっぱり40歳以下のコンペでそのやりとりはナンセンスに感じてしまうんですよね。
二階堂:うんうん。
城間:まあそうだね。
國定:だから予算に関してはある程度抑えるべき要素を絞って、それでも超えそうな分は実施設計で調整ができるように予め考えながら設計するようにしています。
二階堂:なるほどね。
國定:話は変わるんですが、増築のファサードレイヤーを緑色の塗装で提案しているじゃないですか。これはどういう意図なんですか?
二階堂:確か、このテニスコート近くにある建物が、テニスコートの色に合わせてグリーンにしたっていう話があって。
城間:隣のマンションですね。
二階堂:うん。その道向かいのマンションもそこまで配慮しているということで、ここも同じように配慮してテニスコートと同じグリーンにしようと決めたかな。
國定:なるほど。僕は毎回、建物の色決めって最後まで悩んでしまう方なんですが、そういった合理性や理由付けがあるんだったら提案しやすいですね。
二階堂:少しズレるけど色の話でいうと、「白」っていう色に対して今すごい疑問を持っていて、本当の意味で「白を取り戻したい」って思っている。
國定:まあ、沖縄的に「白」ければ「良し」としなっちゃっているよね。
二階堂:個人的に「白の歴史」をずっと追っていて、やっぱり近代建築のモダニズム的な「白」が現代までそのまま続いちゃっている印象。でもそれはどちらかというと西洋建築の歴史(装飾とか様式)と断絶する意味での「白」が本質だから、基本的には日本建築の歴史に当てはまらないと思うし、他にはブルータルな素材に対する手法としての「白」とか、絵画的に何も無いという意味での「白」とか。そういった詳しい言及は探した限りはあまりなくて、自分でもまだ模索中ではあるんだけど。
城間:うんうん。
二階堂:「白」の歴史についての書籍(『白い壁 デザイナーズドレス』(マーク・ウィグリー))でも書かれていることなんだけど、「白」はデフォルトの立ち位置を得たみたいな感じに書いてあって、白く塗ればもう理由は問われない。つまり、白く塗ってあっても白く塗ったとは言われないというか、そこには何も無いとされる。そういう意図を持たないことが良しとされている。
國定:なるほど。意図を持ちませんっていう証明みたいになっていると。
城間:白く塗っているのに白紙みたいに扱かっていますよね。あえてそのデフォルトとしての「白」を使うことで、違う要素を引き立てたいっていうのはあるかもですが、僕としてはもう少し色というものを建築物の一つとして理屈の中に組み込んでいきたい。そういう意味では、二階堂さんがこの緑の塗装を提案したのは凄く良いと思っていて、目の前のテニスコートの要素を凄く意識出来るし、もっと細かい話で言ったらスチールやメッシュの部分でもテニスコートの近くにあっておかしくないようデザインされていると感じます。
二階堂:うん。今回のこの場所で言うと、白く塗ることの合理性がなかった。言い換えれば、緑に塗ったことよりも、白く塗ることに対する理由が見つからなかったっていう意識はあったかな。
城間:はい。その言い方も凄く自然でしっくりきます。
國定:うーん。難しいですよね。「白」が合わなそうなら「無垢(打ち放し等)」で仕上げるっていう流れもよくあるパターンだけど・・・
二階堂:それに関しては、無垢原理主義者みたいな人はいるけど、それももっと自由であるべきだし、自分で素材を変に縛らなくてもいいじゃないかなと思う。個人的には塗装することをそこまで毛嫌いしなくてもいいし、無垢の素材の色や白く塗ること自体をもっと根拠づけて考えたいかな。
城間:それもすごいわかる話です。
國定:確かにその通りですね。
「大屋根下のテニスコートクラブハウス」
(株式会社 国建:城間)


城間:僕の案は、タイトルの通り施設全体を覆うような大屋根を掛けて、その下で色々な場所を作っていこうと考えたものです。沖縄のクバ笠を模した大屋根がテニスを観戦する人や交流する人にしっかりと日陰を作ることを目的の主軸としていて、また既存の建物が古く断熱性能等に不明点が多かったので、性能面をカバーをする意味も込め、既存の屋根にもう一つ屋根をかぶせる二重屋根としました。他には、奥武山公園内の各既存施設を見ると、大きな屋根が立ち並んでいる風景イメージだったので、このテニス管理棟も大きな屋根にすることで公園の風景の一つになることを目指した計画としています。屋根部分の具体的な提案として、凄く大きな屋根になるので軽い素材である木造の躯体とアルミ瓦を用いて屋根を計画したこと、また、屋根を新しくもうけて荷重が増える分、給水塔や劣化が進んでいる庇等のコンクリート部分の撤去を行うことで、建物全体として軽量化を図り構造的には問題ないつくりにしています。プランについては、既存建物の部分は内装改修のみとしてほぼプランを変えず、増築部を既存建物の両サイドに配置し、1階には休憩スペースと救護スペースを、2階には広場的なものを有した客席を設ける形をとりました。この広場は大会期間中のミーティングスペースとなったり、応援に来てくださる親御さんたちの荷物置き場や、客席が満席になった際には立ち見ができるような場所となることを想定しています。大屋根が落とす大きな日陰の下で、広場と、1Fレベルに下がっていく客席と、建物周りのコートサイドに設けたスペースと、それぞれがちょっと近い距離感で一体になって、プレイヤー・サポーター問わず交流が生まれる場所になることを期待した計画としています。私としては、今回大きな改修・増築を施し向こう数十年使える施設にするにあたって、見た目だけ綺麗になったり使いやすくなったりするだけでなく、大屋根一つを設けることで、奥武山公園という大きな公園の中で一つの風景をつくりだすこと、また、良好な日陰空間の下で建物の中―外―コートサイドに一体的な交流が生まれる場所をつくりだすこと、そういったことを目標に建物が生まれ変わるような計画を心がけました。
國定:うんうん、なるほど。
城間:あと、コンペの取り組みについて特徴としては、今回大きな屋根という一見大掛かりな提案をするにあたって、構造設計の方をメンバーに入れて案の初期から構造的に持つかどうかの検証を行っていたり、コストに関しても初期の方からざっくりだけど積算を行い見積もりもとっていて、基本計画レベルとしてはだいぶ正確な数字を出していました。
國定:はいありがとう、わかりました。
城間:結果的にはまあ、一次審査を通らなかったということで、僕なりに色々思うところはあるんですけど、まずはちょっと一次審査通った2人から見てどう思うかっていうところを聞きたいです。いかがでしょう?
二階堂:僕のパッと見のイメージだけど、かなり大掛かりな案に見えちゃって、予算が全然合わないんじゃないかっていう印象を審査員に持たれたのかなって思う。予算的には抑えられているとは言うんだけど、その予算の話とその実際作られたイメージパースとのギャップが大きくて、レイアウトを見ただけなら予算オーバーで一発で弾かれてもおかしくない。
城間:そこに関しては何も担保しなかったわけじゃなくて、実は概算表の別紙として内訳書を差し込んだんですよ。まあ読んでくれると思って一応やったんですけどこのやり方はどうですかね?
二階堂:多分だけど若干ルール違反っぽい感じっていうか、それはプレゼンシートの中で説明すべきものなんじゃないかなと思うけど。
城間:そうなるんですかね。
國定:あー、改めてレイアウト見るとやっぱり懸念事項としてそこに目がいってしまうね。だから、仕上げ表を載せているけど、それを削ってでも予算についての説得力をここでワントピックとして出しとくべきだったかもね。
城間:うんうん、なるほど。
二階堂:だから、もしかしたら審査員は誰も内訳書を見ていないというか、下手したら別紙が配られていないかもしれないね。
城間:その可能性は考慮すべきでしたね。
國定:さらに言うなら、その場で読んだとしても完全に理解できないしね。つまり、「積算量を拾っている→この値段です」って言っても、その場でファクトチェックできない。そういう意味でも懸念点は拭えないから、内訳表とは違う形でのコスト面の説得力を出しとくべきだったかもね。
二階堂:他の案に比べて撤去している量も作っている量も多いし、しかも木造っていうことで、ぱっと見でその根拠がなければ、予算は絶対にオーバーしていると思われかねない案かなと思って、そこで一気に距離を取られてしまう恐れがある。
城間:なるほど。レイアウトの中でその部分の丁寧な説明をしていないっていう戦略ミスですね。それは1つ反省点です。相手にどう受け止めてもらおうかていう戦略が少し弱かったんだっていうのは今聞いていて、確かにそうだよなって感じですね。
國定:そうだね。僕もレイアウト作る時、本当にしつこい位わかりやすくすることを心掛けるし、何度も読み返すからね。そうでないと読んでくれないかもしれない。だからそういう意味でも内訳書を出して、それが良かったとしても、やっぱりそれだけでは不親切だったかもね。
城間:うんうん。
二階堂:後は、レイアウトの2枚目が特にそうだけど説明がすごい多い。
城間:多いですね。そこは少し試した部分もあって、どれだけ細かくても読んでくれるんじゃないかと思って、熱量で押したらどうなるかなと・・・
二階堂:うんでも、僕は文字数が熱量ではないと思っていて、もっと取っ付きやすい熱量の出し方の方が良いんじゃないかな。やり方がプロポーザル的というか、具体的なイメージを禁止されているのかと思う位のレイアウトだよね。
城間:確かにプロポーザルっぽい書き方なのかもですね。
二階堂:で、尚且つ予算オーバーの先入観があるから一層読みにくい感じのイメージになっちゃっている。
國定:そうですね。コストが多そうで一線引かれて文字が多くてっていうので、さらに一線引かれていると。
二階堂:そう。だからデザイン的にもディテール的にも良く考えられているのに勿体無くて。
國定:そこに関してはタイトルや平面から感じ取れる大らかなイメージとギャップを感じますよね。そこまで書かないと伝えられなかったのかなって。
二階堂:うん、だからやっぱり戦略的にもったいないと思うし、提案が悪くて落とされた案ではないと思うんだよな。
城間:なるほど。今にして思うと、変なテンションで作品づくりをしていたかもしれません。今回は一見すると一番無茶な案を提案するからこそ、コストと構造を頑張ることを決めていて、どうやったら成立するかをひたすら考えてしまった感じです。提出前日の夕方5時ぐらいまで積算内訳書を詰めていたし、仕上げを削りながらコストを合わせながらとかずっとやっていました。だからあんまり綺麗に見せるというよりかは、成立させることに集中してしまっていたので、そこが取っ付きにくさに現れていると思うし、戦略というかアウトプットを失敗した感じはしています。
二階堂:うん。でもそれも悪いことじゃないし、惜しいと言うか二次審査に残っていたらもっと評価されていた案だと思うよ。
國定:うんそうですね。最初見た時、この大屋根の発想は僕にはなかったから結構良いなと思ったんだよね。増改築の計画ではどっからどこまでをやるかっていう発想にみんな囚われがちだけど、一つ屋根の下で増築部と既存の部分をある意味同価値に捉えるっていう、割と理にかなっている案なのかなって。
城間:うんうん。
國定:で、大屋根の発想は良しとした時に気になるのが平面計画で、特にコンコースが建物の左右で分かれていて2階部分で行き来出来ないのが凄くもったいないなと思う。絶対繋げたほうが良かったしその方が案として楽しい。
城間:そうだね。そこもやっぱり読み違えていて、運営に支障があるからやらないっていう選択肢を取ってしまった。一つ大屋根の下で過ごすっていう考えを突き詰めるなら、確かに2階で回遊出来た方がよりコンセプトに合っていた感じはするね。あくまで今振り返って考えるとだけど。
國定:あとは平面図の好みの話かもしれないけど、人の姿図を平面図に描かないのはなんで?
城間:ああ、あんまり入れないな。なんでだろう。
國定:僕はコンペの平面図には必ず入れるようにしていて、これは絵にすることで空間の使い方をイメージさせやすくするためで、ここで人が座れますよとか、ここで人が溜まって喋れますよみたい具体的なイメージを言葉以外で説明することがレイアウトでは重要だと思っている。
二階堂:うん。
城間:さっき二階堂さんが言っていた文字数が多いっていう指摘にも繋がっていて、その辺の説明を人に置き換えても良かったかもしれない。でもこの小さい縮尺で人が何やっているか分かるかな?
國定:平面上に粗密があるだけでも割と伝わるよ。足りない部分は短文を付け加えるとかで対応できるし。そういう意味でも、城間くんの平面図が単調な印象になってしまっているから、もう少し変化なり面白さを足しても良かったかなと思う。
城間:あーそうか、なるほどね。
二階堂:イメージさせる余地というか余白が少ないのかもしれない。そういう余白があることで自身が考えている以上に面白いと思わせるというか、それが少ないと審査員のイメージする割合が少なくなってしまう。
城間:説明しきっているってことですね。
國定:やっぱり読みにくいかどうかはもっと気にした方がいいと思うし、色んな人にできる限り読んでもらって意見をもらった方が良かったと思う。ブラッシュアップとかレイアウトが洗練されていない印象を受けてしまう。
城間:確かにシャープではないね。
二階堂:後は、審査員にもっと素直に解いてほしいと思われたかもしれないよね。つまり提案もプレゼンシートの作り方も素直じゃないなっていう二重に難しく感じさせてしまったかもっていう。
國定:なるほど。
二階堂:それにやっぱり木造に対する公共維持管理の難しさの壁もあるしね。
城間:その辺は植栽の話もそうですけど、ティーダフラッグス全体を通してもまだ審査員に探りを入れるような感じでしか提案できていないですよね。
二階堂:植栽とか木造を提案するんだったら、ここでそれを使わないといけないっていう絶対的な理由が必要になってくると思うね。だから素直に解けば別の案みたいにあっさり解けるのに、わざわざ木造にしているっていうことに対して別に素直に解いてくれたら木造じゃなくてもいいのになあって思われてしまう。
城間:実際の見積もりだと、この大屋根の構造はコスト的に木造でしか成り立たないっていうのはあるんですけど、やっぱりそれは設計者である僕の都合でしかないと今なら思うし、例え予算がもう少しあってRCの屋根を提案したとしても施設に対して無理をしている感は拭えなかったと思う。やっぱり素直じゃないなっていうところで構造種別とか関係なく大屋根っていう選択肢が実は無理があったんじゃないかなって。二重屋根の話も含めてそこまで大掛かりにしなくてもっていう印象が審査員に引っかかってしまったのかもしれないですね。
二階堂:うん、やっぱりコストに対する先入観の問題があると思う。木造だとしてもこの大屋根が予算で収まるって聞いても信じられないし、他の案に比べて圧倒的に大掛かりに見えるからね。
國定:そうですね。問題なのは審査員側がその場でコストのファクトチェック出来ないことですよね。
二階堂:ああ、そうだね。
城間:でも、過去にはやりすぎた案でも二次審査に残っている案はあって、例えば大渡海岸でのティーダフラッグス2021の時に奥原さん(建築設計室ant)が出した案とか。ああいった予算オーバーだろうなっていう案に比べて落ちた理由は単純に魅力が足りなかったってことだけなんですかね?
國定:うーん、空間の力強さは足りていなかったんじゃないかね?こういう見え方、こういう空間って良いよねって思わせるもの、惹きつけるパワーとその伝え方が足りなかったのでは。
二階堂:ああ、あとはやっぱりテーマの違いじゃないかな?ティーダフラッグス全体を通して特徴的な敷地設定が多くて、そこではやっぱり建築の記念性が求められていると思うけど、今回のコンペは別にそこまでじゃない。戦争の爪痕が残る場所でもなければ歴史的な建築物の改修っていうわけでもない。コンペの要項を見ても機能が求められているのは明らかだし、その機能を満たすだけでも予算いっぱいに近い感じだから。
國定:割とそういう意味では今回はかなり特殊な要項でしたよね。いつもより機能的な制約や面積の指定が多いし、逆にこの要望から意思を感じますよね。あまりやり過ぎるなよっていう意思。
二階堂:確かに。要項を読み解いていくと既存のままの面積で、既存のあの機能で新しいものとしては観客席があったら良いぐらいの書き方だったよね。
國定:そうそう。で、会議室の面積が既存のものより一回り小さく指定されていて、ということは会議室を小さくして残った部分を提案しなさいよっていうことだと思った。そういう「裏テーマ」的な部分については、城間くんの案は要項を満たしているけど、かなり無視してしまったのかもしれないね。
城間:うん。無視はしていると思うけど、一方でやりたいことをやり切ったぐらいの気持ち良さはあるね。今回はしょうがない。
二階堂:うん。だから城間くんの案と銅賞のFAD古堅くんの案は構成が似ているけど実は一番対照的な案で、古堅くんの案が残ったっていうことは本当に審査員は要項以上のものをほとんど何も求めていなかったってことだと思うよ。
城間:ああ、なるほど。
國定:そうですね。今回は審査員側が改築っていう難しさをちょっと想定しているってところもあるんだと思うし、これはやっぱり審査員からのガイドラインというかそんな感じはしていますね。その要項を守るものが絶対いいとは言わないけど、でもやっぱりそこに対する考えは少し頭に入れといたほうがよかったんじゃないかなとは思うね。
二階堂:うん、それはそうだね。本当に全部要望をクリアすればよかったっていう話じゃないと思うし。
城間:うんうん。
國定:他としては敢えて言うならだけど、「クバ笠」をコンセプトの一部に使っているけどもう少し他があったんじゃないかなとは思うね。モチーフは何でも良いにしてももう少し案自体と関連付けられなかったのかなって。
城間:それは難しかった。
二階堂:そうね。やっぱりそれは大屋根ありきで考えているから、難しいよね。
國定:確かに難しい部分だけど、ここが薄いとコンセプトそのものがピンと来ないまま読み終わっちゃうと思うんですよ。つまり大屋根を掛ける説得力が少なくなってしまう。だからこういう他とは見るからに違う案って意外とここが大事なポイントな気がしています。
城間:うんうん。
二階堂:そうだね。プレゼンシートを読んでみると大屋根までに至る説得力が薄いのかもしれない。それはさっきの緑化の話にもまた繋がると思うけど、それを提案することの必然性であったり、要望を超えた提案をする上での説得力は通常よりも気を使うべきポイントだったと思うね。
城間:なるほどです。総じて取っ付きにくい、分かりにくいプレゼンシートになってしまっているということですね。反省して次に生かしたいと思います。
総括
國定:総評としては今回のティーダフラックス2024はどういった印象でしたか?改修・増築っていうことについて考えると、2013年の「ナングスクコンペ アンダー40」以来の沖縄県内コンペだったと思います。だから今回参加した人は改修・増築コンペっていうのはほとんどが初めてのテーマだったと思うし、設計期間や建築規模も含めて少し難しいコンペだったなっていう印象がやっぱりあるんですよ。コンペの概要発表から提出期限が1.5ヶ月となっていて、参加した身としては増改築で考えるにはあとちょっとスタディや詰めの時間が欲しかったなっていう感じですかね。言い訳ですけど。
二階堂:うん、でもやっぱりコンペの期間は短くあるべきだなと思う。期間が伸びれば出来ることは増えるけど、そこまで無償の負担を増やすべきなのかっていう問題があるから。
國定:うんうん、それはそうなんですよね。
二階堂:だから実施設計に入った段階でその時間を取ればいいと割り切ることも必要だし、それに学生も提出出来ることを踏まえると、時間が取れるほど年齢を重ねて経験ある人が有利になってしまう。だから、やっぱり期間を伸ばせば良いっていう話ではないと思う。
國定:確かに。
二階堂:あと改修かどうかっていうことについては、やっぱり全国的な流れで改修とかリノベーションが増えてくるのは当然だし、それをやるっていうのはテーマとして今後そういう経験も増やしていかないといけないと思う。
國定:そういう意味では、コンペの今後も新築が減って改修増築がさらにどんどん増えますよね。ティーダフラッグスのこれからの対象になるであろう規模の物件も改修の方が需要あると思うし。
城間:うんうん。
二階堂:実施コンペだからティーダフラッグスの意味があると思っているから、改修・増築だろうが新築だろうが今後も続けてほしいけどね。
城間:僕は仕事で少し似たような増改築の案件を近々でやっていたんで、このコンペの発表を聞いた時に素直にいけるって思ったんですよ。結果は残念でしたけど、その中でもやっぱり新しい学びは確実にあったと思いますし、次に出すときはもう少しフィードバックしたものを持って、また向かっていきたいですね。
二階堂:うん。
城間:最近のアンダー40は経験値だけじゃないところで評価はされているとは思っているんですけれども、自分のスタンスとしては逆に経験値をしっかり活用して、何かしら踏み込んだ提案をやりたいなっていつも思っているし、そこはスタンスを変えないで、あとはとっつきにくさと分かりにくさを反省して、可愛げがあるものにしていけたらなと思います。
二階堂:うんうん、良いと思う。建築としての可愛いじゃなくて、アウトプットでの可愛いって意味だよね?
城間:そうです。プレゼンテーションまで含めてのアウトプットの可愛げ。國定を見ていたら大事だと思いますね。
國定:まあ、僕もそれは気を付けるポイントですね。「中庸」な発表を心がけます。
城間:まあ、僕は久しぶりにティーダフラッグス出したけど楽しかったですね。
國定:ちょっと聞きたいんですけど、僕の案は1位を取りにいっている案なんですかね?
二階堂:だと思うよ。
國定:うーん、ニュアンスは分かるんですけど言語化が難しいし、素直に飲み切れてはいないなっていう感じはしているんですよね。
二階堂:でも金賞を取ってなんぼだとも思う。
城間:結局は、その取りにいっているっていう批判は、参加してない人の意見でしかないと思うけどね。いつも言っているけど、戦略としてのそつなくミスなくバランス良くは國定の案の良いところではあるんだから。
二階堂:それはもう言わせとけば良いっていうか、的外れな批判だと思うよ。建てさせてもらえるからこそ得られるものがあるのは間違いないからね。
國定:まあ、そうですね。実際に建築物を建てないと批判が始まらないわけですしね。これを利用してやるぐらいの心持ちで、今後もやっていこうと思います。
二階堂:うんうん。
城間:コンペキラーと呼ばれる人達ってその辺はどう考えているんですかね?
國定:どういうモチベーションなのか聞いてみたいね。多かれ少なかれそのコンペに合わせにいってる気持ちは絶対あると思うし、金賞を取れそうだなと思う案を出すことに関して。
二階堂:まあ、そこはわからないけど、例に出すなら「中村拓志(中村拓志&NAP建築設計事務所)」と「石上純也(石上純也建築設計事務所)」のスタンスの違いみたいな感じかなと思っている。個人的には「中村拓志」はコンペ上がりの人で、もちろん代表作もあるし良い建築をつくっていると思うけど、やっぱりその場その場でコンペ的に解いているような感じはする。「石上純也」はそうじゃない人ってイメージで、こんな現象を起こしたいっていう建築の枠に囚われないものをつくっている。でも必ずしもコンペ上がりの「中村拓志」の建築が悪いということではない、みたいな感じかな。
國定:うん、分かりやすい説明ですね。僕も2人の建築やスタンスどちらも好きです。
二階堂:うん、だからまあ、やっぱりつくり続けたら良いんじゃないかなという結論になると思うし、その先の最後に何か見えてくるものもあるかもしれない。つくることに集中すれば良いと思うよ。
國定:うん、出し続けて取り続けるからこそ見える景色があるだろうという結論ですね。よく分かりました。つくることに集中して頑張ります。最後に優しい激励を頂けたということで、今回の座談会を終了します。ありがとうございました。



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